「簡単、美味しい野菜料理を誰にでも」野菜料理家・庄司いずみさん前~後編~

ひつじの仲間はここにいる

「本を出版しても、料理は主婦や趣味の延長だと考えていました」。

野菜料理家として、ヴィーガン料理の第一人者として、これまで多くの出版を手掛けてきた庄司いずみさん。前回は菜食に目覚めた理由、菜食で生きていこうと決心するまでの経緯を中心にお話をお伺いしましたが、後編では“普通の料理家”とはひと味も、ふた味も違う経歴を歩んできた庄司さんの料理家転身のきっかけに迫ります。

また現在、力を入れているオンラインサロン「ベジタリアン・キュイジーヌ・サロン」やこれかた取り組んでいきたい活動などについても語ってもらいました。

「簡単、美味しい野菜料理を誰にでも」野菜料理家・庄司いずみさん~前編~

(取材・写真 神谷真奈)

人気ブロガーは突然に

ー野菜料理の面白さを知ってほしいと、2007年ブログを始めました。

すでにヴィーガンを始めて10年近くが経っていました。手探りの状態で始めた野菜料理でしたが、ヴィーガン料理は本当にクリエイティブで面白い。その魅力を伝えたいと思いました。
ちょうどその頃は空前のブログブーム。当時活躍する料理家にもブログ出身の人も多く、直観的に「これだ!」と思いました。
ブログを始めましたが、私の本当の目的は出版でした。幼いころから本が大好きだった私は「いつか自分の本を」と思っていたので、出版の“足掛け”として「野菜のごはん」をスタートしました。

最初の半年は毎日毎日、こつこつと更新をしてアクセスを増やしました。本当に細々とレシピをアップして、コメントを書いてくれた人に丁寧に返信をしたり、他の方のブログを訪れて足跡を残したりして、という感じです。

それが、ある日、たまたま爆発的にアクセスが増えた。きっかけは、ある著名人のブログの投稿でした。私のレシピを基に作った料理をその方がブログでアップして、一気にアクセスが増えたんです。もちろん、その方とは知り合いでもなんでもないのですが、何度も投稿が続いて「人気ブロガー」としてランキングで注目されるようになりました。

「野菜料理家」で生きると決めた


このチャンスを逃すまいと考えた私は、アクセスが増えた頃に数社の出版社に企画書を提出しました。このうちの1社で企画書が通り、記念すべき1冊目が出版されることに。しかし、まだこの時点では「出版社を騙して企画が通った」と思っていました。売れる自信がなく、実際1万部刷りますと言われて「そんな売れないよ」「やめてくれ〜」と思っていたくらいでした。

ただ、これは本当に良い誤算だった。書店に並んだ翌日には重版が決まるほど品薄になりました。これがまた注目を集め、初出版は大成功。すぐに次の出版の話が来て、立て続けに出版が決まりました。

でも、まだこの時点で料理でやっていうこうという気持ちはありませんでした。
出産後もフリーのライターを続けていて、本業はそっちだとずっと思っていたので、料理で出版をしても「ライター」の1つの仕事として出版できた。ラッキー、という風に思っていました(笑)。

しかし、その考えが変わったのは出版してから1、2年が経ってからです。

徐々に読者の方と、直接交流する機会が増えて「いずみさんの本を読んでベジタリアンになりました」「ベジタリアンライフが楽しくなりました」と声をかけてもらえるようになりました。
そういった声をもらい「もっと責任を持って発信しなければならない」と強く感じました。もちろん、それまでも不真面目にやっていたわけではない。それでも忙しさにかまけて、その発信力の大きさに気づいていなかったんです。

元はと言えば、本に大きなこだわりを持っていたのも「人生を左右する大切なものになりうる」からこそ。本は一生、その人の手元に残るものになる。そこからですね、趣味や主婦の延長として料理をやるのではなく、「野菜料理家」として腰を据えて仕事に取り組もうと思ったのは。

ー一般的には、料理家というとどこかのスタジオで人気が出て、出版…といった流れなのかと思っていましたが、庄司さんは随分と違う形だったんですね。

そうですね、かなり異色ですね(笑)。料理家として歩むと決めた後は料理の勉強、研究を重ねることもしかり、八百屋や農家さんなどを訪れて話を聞いて、野菜の勉強を積極的に行いました。年間一番多い時には10冊のレシピ本を出版しましたね。

ヴィーガンを料理の1ジャンルに

ー庄司さんのレシピ本では「簡単」というのがテーマですよね。しかも、本当にどこの家庭でもある調理料でレシピが作られていてます。

家庭においては「簡単」が一番大切にされることですよね。その次にできるだけ「美味しい」ものが来る。それが叶えられるのがヴィーガン料理です。そしてヴィーガン料理って実際に作るのが面白い。その過程がとてもクリエイティブです。私もその魅力にどっぷりつかっていきましたから。

実をいうと私の野望はこの“ヴィーガン”という言葉を使うことなんです。

意外かもしれませんが、これまでの私が手掛けてきたレシピ本には、ヴィーガンという言葉が一回も登場しません。
理由は単純で、まだまだベジタリアンやヴィーガンという言葉が浸透してないから。もしも、ヴィーガンという言葉を使ってしまうと、見た人は「これは私のことではないな」と思って本を手に取らない。それは出版社にとっても、筆者にとっても痛手です。

しかし、私はこのヴィーガンという言葉に、これからはこだわっていこうと考えています。菜食という食生活、これは環境や体、地球すべてにとって良いことだと自分自身確信しているからです。

それは「みんながならなければいけない」ということではありません。「食は楽しみ」です。食を人に強制することはできません。実際、家族もベジタリアンではないので家庭では、主菜のみ別メニューを作って、食卓を囲っています。

ただ、ヴィーガンがさまざまなライフスタイルの1つとして、もっと浸透していけばいいなと思っています。おしゃれでも、楽しいでも、美味しいでも良い。和食やイタリアンのように、ヴィーガンが料理の1ジャンルとして確立できるように、広げていきたいですね。

どこでもベジタリアンメニューが選択できる世の中に


「ベジタリアン・キュイジーヌ・サロン」に加盟すると特典を受けることのできるお店の1つ「にしまきごはん」さんのランチセット。

ーこれからどんな活動に力を入れていきたいでしょう?

まずは、2015年に始めた日本初となるベジタリアン専門のスタジオでの料理教室での活動。私がヴィーガン料理にハマっていたのも、作る過程がクリエイティブで、とにかく楽しいから。その楽しさ はレシピ本だけでは、到底伝えきれません。実際に、料理教室に足を運んでその面白さを実感してもらいたいですね。我慢や健康のためではなく、ヴィーガン料理をおいしい、面白いと感じて選択してもらえる環境を作りたいです。
スタジオでは現在、私のレッスンに加えて、さまざまな料理人をお招きしてのクラスも企画しています。

また、最近力を入れているのが、「ベジタリアン・キュイジーヌ・サロン」という会員制のオンラインサロンの運営です。こちらはスタジオでできないことを中心に、会員を増やしています。
例えば、ベジタリアン・ヴィーガンに関する世界のニュースを配信すること。これまでメディアに関わってきて、取材はライフワークです。内容もかなり濃いので、ビジネス関係から手軽なレシピの情報まで幅広く扱っています。

そして「ベジタリアン・パスポート」。会員の方に配るこのパスを提示することで、ベジタリアンレストランなどベジタリアン料理を提供したり、対応しているお店で、お安くメニューを注文できたり、おまけを付けてもらったりすることができます。これはお店を利用する人もにメリットがありますし、全メニューがベジ対応ではないお店にとっては、ベジメニューを導入した意義が感じられます。

私の夢は「レストランやカフェ、誰もが毎日訪れるコンビニやファミレス、社食、学食にも、1~2品はベジタリアンメニューがある」ことです。野菜料理家として活動し始めてからずっと口に出してきた目標です。

美味しいからこそヴィーガンが選ばれるようになってほしいし、そしてヴィーガン商品がきちんと売れ、ビジネスとして成り立つことが極めて重要だと思うんです。そのために、これまでにもさまざまなビジネスに挑戦してきました。その中で批判があったこともありました。しかし、少しずつだけど近づいているな、と実感しています。これからも、その夢に向けて先陣を切って向かっていければと思います。

★庄司いずみ(しょうじ・いずみ)

1965年、山口県岩国市出身。趣味も料理という生粋の料理研究家。旅行が好きで、今年のはじめにもスイスやアムステムダムなどヨーロッパ諸国を訪れる。

庄司いずみ ベジタブル・クッキング・スタジオ
オンラインサロン『ベジタリアン・キュイジーヌ・サロン』
ブログ 『vege dining 野菜ごはん』


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Mana Kamiya

理事特定非営利活動法人 日本ヴィーガンコミュニティ
『ひつじの。』編集長。地元新聞社の記者になったのち、オーストラリア・メルボルンに移住。現地の日本語フリーペーパ誌でフリーランスライターをしながら、レストランやカフェのアルバイト、ツアーガイドなどを経験。2018年夏に日本に帰国したのち2018年10月より再び新聞社で働き始める傍ら「多様性のある社会」の実現を目指し、いろいろなことに挑戦中。趣味はクライミング。