6畳一間からの挑戦。“メイドインジャパン”の代替肉を世界へーグリーンカルチャー社長・金田郷史さん特別インタビュー前編

ひつじの仲間はここにいる

「やっと、世界と肩を並べられる代替肉ができました」。

ベジタリアン・ヴィーガンの人であれば一度は利用したことがあるだろう。インターネットの通信販売だ。植物性のみの製品は一般のスーパーではなかなか手に入りづらいため、通販を利用する人は多い。その中でも“Green’s Vegetarian”を愛用する人多いのではないだろうか。かのいうライターも時々利用するが、商品の種類も多く、なにより食べ物に関しては裏のラベルを確認する必要ないので、超が付くほど便利だ。

このサイトを運営しているのが「グリーンカルチャー」。埼玉県三郷市に本店営業所を置く、従業員わずか8人の小さな会社。通販サイトのイメージが強いが、今最も力を入れているのが、代替肉の開発だ。しかも、ここでは世界のヴィーガンを驚かせるような開発が行われている。

創業者で、社長の金田郷史さんは、代替肉開発研究者でもある。そんな金田さんが自信を持って「日本が世界に誇れる発明」という技術は、なんと今年7月に完成したばかりで、今年中に製品が発表される予定だ。

そんな金田さんが23歳で起こした会社は今年で9年目を迎える。「ここからが企業としても勝負所」と語る金田さんに、今回直撃インタビューを敢行。前編の今回は、どうしてベジタリアンを始めたのか、またなぜ会社を起こしたのかを中心にお届け。2週間後に公開する後編では、大発明だという代替肉の開発、今後のベジ界の行く末を中心に記事を発信いたします。どうぞ、お楽しみに。

(取材・写真一部 神谷真奈)

大人の言う常識は本当に正しいのか

ーまずはどうして金田さんがベジタリアンになったか教えてください。

高校を卒業した頃に、世の中の様々な価値観を疑う時期がありました。大人が当たり前だと言っている常識が本当に正しいのか、客観的に考えてこれまでの価値観でおかしいものはないか。両親、大人への反抗心が芽生えるような年頃だったのかもしれないです。

そんな中、肉を食べることに疑問を感じ始めたんです。幼いころからペットも飼っていて、ベジタリアンという言葉もなんとなく聞いたことがあったので、インターネットで情報収集。案の定、いつも口にしている牛や豚の屠殺動画などを見て、その時ショックを受けました。そこで「まずはベジタリアンを実践してみよう」という気持ちでベジタリアンを始めました。

最初は本当に皆さんと一緒で、納豆ご飯が主食でした(笑)。大豆ミートも買って調理することもあったけど、今以上にベジタリアンの食生活は不便だった。

ーそのあと、アメリカに留学されますね。

はい、アメリカのシリコンバレーにある州立カレッジに通いました。アメリカに行ったのは完全なる海外への憧れの気持ちです。当時、映画でしか見たこのないアメリカ社会。それって一体どうなっているのかなと思いまして。専攻した経営学も、なんとなく小さい頃から「経営者ってかっこいいな」というイメージがあったので選びました。

異質な存在から“普通”の存在に

当時のアメリカは想像した通り、日本よりもベジタリアン・カルチャーが進んでおり、多くのスーパーマーケットで、ベジタリアンやヴィーガン製品を置いたコーナーがありました。そういった環境が整っていることはもちろん、ベジタリアンという考え方が社会の中で一般的に認知されている面にも驚きました。
例えば、日本でベジタリアンだと言えば、当時はいわゆる変人扱いに近いものがありました。「どうしてやっているのか」から「宗教なのか」まで、その言葉や考え方自体が異質なものでした。
しかし、アメリカではベジタリアンだと言っても、拍子抜けするぐらい何も聞かれませんでした。それぐらい多様性への理解が進んでいる国だった。ベジタリアンという存在が市民権を得ていたんです。その現状を肌で感じて、日本でもベジタリアンを広げたいという気持ちが在米中に募り始めました。

6畳一間から始めた通販事業

帰国後は大手お菓子メーカーの営業を1年半経験しました。これは日本でベジタリアンを広めるにあたって企業がどのようなやり方をしているのか知るためです。しかし、ベジタリアン事業をやりたいという気持ちも次第に強くなっていき、2011年、仕事を辞めて、ベジタリアンの通販事業を始めました。
動物性不使用の商品を自分で仕入れてきて、それをどんどん部屋に保管していきました。6畳一間の狭い部屋が、あっという間に段ボールだらけになって、生活する場がなくなって大変でした(笑)。

植物性商品を扱っている国内の企業に問合せをして、個々に仕入れをしていきます。しかし、意外なことにも、植物性商品も結構あるものです。そういった商品が色々なところに散在していたので、消費者としてはすごく不便でした。なので、サイトを開設して1か所で買えるようになったら便利になるのではないかと。

ー通販という方でベジタリアンを広げたかったのはどうしてでしょう?

僕はベジタリアンですが、今でも声を大にして「ベジが良いよ」みたいな発信をすることはしていません。なぜか。それは、その環境がまだ整備されていないからなんです。ベジタリアン・ヴィーガンが簡単にできる環境がないのに、人におすすめはできない。それなら、自分がその環境を先に整えたいと思いました。
その拡散の方法にも、様々なものがあると思います。NPOを設立したり、デモをしたり、ブログで配信をしたり……でも自分がするなら経営学を生かしたものをしたい。それなら、供給する側に回るのが一番合っていると思いました。「ベジをやりたい」と思った人に食品を供給することができれば、それが一番良いじゃないですか。

ちなみにですが、僕がヴィーガンではなくベジタリアンを続けるのもここに理由があるように思います。外出すればベジタリアン対応の食品はあっても、なかなかヴィーガン商品を探すのは難しい。なので無理なく、継続的に菜食を続けるため、ストイックになりすぎず、乳製品や卵を食べることもあります。

仕事場の様子をとらえた一枚。代替肉開発にはパソコンが欠かせない。

小さな企業の大きな挑戦

ーその後、会社の規模はどうなっていきましたか?

3年目になるとさすがにスペース的にも不便が生じてきて、家の近くにオフィス兼倉庫を借りました。そして翌年には少し広いところに移転して、最初よりも約6倍近くのスペースになりました。
現在の本店営業所へは16年に移転。ここは当初の10倍近くの規模になります。なので、会社の規模としては年を経るごとに大きくなっています。

ただ、今は規模というか商品の種類を増やしすぎないように気をつけています。少し前までは無添加、自然派といったジャンルのものも販売していましたが、今は「ベジタリアン・ヴィーガン食品」を前面に押し出しています。原点回帰というか……ターゲット層を再度見直して、ぶれないようにしようと思ったためです。

ー会社の経営としても順調に推移してきたのですか?

そうですね。一般企業並みというか、微増です。これまでは”従業員の1人”として会社の業務をこなすことに精いっぱいで、ろくに営業や広報ができなかった。つまり、経営のみに集中できない状況が続いていました。

しかし、2017年頃からベジタリアン・ヴィーガンと言った言葉がメディアでも取り上げられはじめ、業績も上向きになっていきました。それに伴い、大きな転機となったのが、開発担当者の雇用でした。理系のバックグラウンドを持つ社員を雇い入れたことで、自分が経営に集中できるような環境づくりができ始めました。

5年目から取り組んできた代替肉開発事業も、加速度が増し、高クオリティの商品が次々と誕生。そして今回、革新的な代替肉を作ることのできる技術を確立することができました。


6畳一間から日本が誇る代替肉ベンチャーとして成長を続ける金田さんの率いるグリーンカルチャー。次回ではその開発秘話と、今後のベジタリアン・ヴィーガン界の展望を聞きます。

★金田郷史(かねだ・さとし)
1987年5月27日、東京都葛飾区生まれ。「20代のすべてを仕事に捧げてきた」というほど、過去8年間は仕事一筋で、趣味を持つ暇さえなかった。現在はドライブが趣味。家庭ではベジタリアンの奥さんと一緒に食事を楽しむ。

グリーンカルチャーHP
FB @greenculturecojp


「ひつじの。」の読者のみなさまへ
「ひつじの。」のウェブサイトにお越し頂き、そして最後まで記事を読んでいただき、本当にありがとうございます。ひつじの。はヴィーガンの”体温ある声”を届けるため、NPO法人・日本ヴィーガンコミュニティが運営を行っております。
孤独や不安を抱えるヴィーガン=「ひつじ」へメッセージを届けようと、編集部一同、寄稿者、取材対象者は全員ボランティアとして参加しています。人間、動物、地球、すべてに優しく、明るい未来を一緒に作るため、サポートをしませんか?
1日10円からできる手軽な社会貢献。ぜひ、以下のボタンよりサポートの詳しい情報をご覧下さい。
(ひつじの。編集部一同より)

The following two tabs change content below.

Mana Kamiya

理事特定非営利活動法人 日本ヴィーガンコミュニティ
『ひつじの。』編集長。地元新聞社の記者になったのち、オーストラリア・メルボルンに移住。現地の日本語フリーペーパ誌でフリーランスライターをしながら、レストランやカフェのアルバイト、ツアーガイドなどを経験。2018年夏に日本に帰国したのち2018年10月より再び新聞社で働き始める傍ら「多様性のある社会」の実現を目指し、いろいろなことに挑戦中。趣味はクライミング。