『幻想力』で生きやすく。シュールなクリエイターによる “幻想社会” の実現ー岡本輝起さん

ひつじの仲間はここにいる

首には犬用首輪、手には”指輪型人工妖精”、趣味は野宿……。

不思議という言葉では表せない、独特の出で立ちと雰囲気を持つ岡本輝起さん。初めて会ったのは、とあるイベントだったが今では19歳と言う若さで1つの会社の社長になっていた。

会社の名前は「Ctrl(コントロール)株式会社」。またの名を「月の管制塔」という。2019年5月に立ち上げたばかりの”幻想代理会社”で、シュール、SFをテーマにしたコンテンツ制作をしているという。あまりにもクリエイティブな言葉と発想に、取材する方も今回ばかりは「?」で頭がいっぱいになった。しかし、それも彼の狙い。

3度の飯よりSF、妄想好きという岡本さんに現在取り組んでいる事業を始めるきっかけや、今後の展望を聞いた。

(取材・写真 神谷真奈)

“謎ゲー”から立体文字まで

ーSF、シュールな世界観のコンテンツ制作をしていると聞いています、具体的にどのようなものの制作に取り組んでいるのでしょう?

簡単に言えば、主にゲーム制作をしています。僕はゲームのことを“電劇”と呼んでいますが、この電劇で様々なシュール、SF、幻想的な世界観を表現することを目的にしています。
例えば意味不明なストーリーで、意味不明なルールのもと、突然ゲームオーバーになるゲームってしたことありませんか?いわゆる「謎ゲー」「死にゲー」です(笑)。そういった電劇を制作したり、他にも動物が革命を起こして人間を地球から追放した後の世界を描くSF的な「革命後記」という物語の執筆、全く新しい言葉や単語の制作などをしています。

こうした活動の原点にあるのが「立体文字」です。立体文字は、その名の通り文字をパソコンで立体的に構築し、3Dプリンターで制作します。この活動は2018年10月頃から取り組んでいるんですが、今回の会社設立はこの「立体文字」の将来性を見越して行いました。

ー立体文字はどうやってアイディアを得たのでしょう?

近未来を描いた、映画「ブレーブランナー」やアニメ「攻殻機動隊」のような世界にはたくさんの立体広告がある。そういった映像をふと見ながら思ったのが「文字だけが遅れている」ということです。これだけ時代が進んで、たくさんのものが3D化されているのに、文字はまだ平面情報にしかすぎない。それで、もし文字が立体情報として捉えられるようになったら、どうなるんだろうと思いました。

パソコンで立体文字の原型を作るのは難しくはありません。まずは、その漢字や文字の成り立ちについてよく勉強し、自分なりの解釈で文字の形を決めていきます。これまで「左」「右」「車」などの作品を作りましたが、例えば「車」だったら車輪をイメージして、横に倒すと車輪の形になるように設計するようにしました。
将来的には、360度どこから見てもその文字だと認識できるまでになると思っています。


正面から見ると普通の「車」
回してみると……
横から見るとこんな感じ

3度の飯より妄想好き

ーどうしてSFやシュールなものを題材にコンテンツを作るようになったのでしょう?

とにかく幼いころから妄想が好きだったんです(笑)。サッカーボールを蹴りながらでも、どこかの芝生で寝転がっているときも、布団に入って寝る時も、ずっと妄想をしているんです。

「自分がロックマンだと仮定して、可愛い彼女とイチャイチャする」というものから「自分があの動物だったらどういう気持ちなんだろう?」「これとこれが逆だったら」とか、頭の中でこねくり回すのが大好き。きっと、田舎に住んでいるからすることないし、友達もいなかったからだと思うんですけど(笑)。

ゲームも小さいころから好きで、SFに限らずピクミンとかゼルダとかをよくやっていました。それを制作する側に回りたいと思ったきっかけが、高校生の時に見た映画「ローグワン」「ジャングルブック」でした。映画館で見て「CGってすごい」と思った。だからCGを学びたいと思って、3DCGの専門学校への進学を希望しました。

ライターもシュールな写真に挑戦してみた

受験ノイローゼと大失恋

しかし、学校も両親も専門学校に進むことには反対でした。一流の大学に進めと、学校には厳しく言われました。そのため、受験シーズンになっても、自分は何のために勉強しているのか、そんなことを考えることが増えて、高校3年生の秋には不登校に。
そのまま、大学進学は断念して18年に高校を卒業した後は、地元での就職を促進するメディアや、貧困などの社会的な問題に取り組む団体にインターンをしました。

そんな中、ゲーム熱が再燃したきっかけは、実は失恋でした。人生初の大失恋。それはそれは苦しくて、辛くて言葉になりませんでした。だから、好きだったゲームに打ち込みました。
今度はプレーする方ではなく、プログラミングです。瞬く間にハマっていって「やっぱり仕事にしたい」と思えた。これも普通のゲームではなく、やはりシュールなもの。
シュールって「じわじわくる面白さ」とか「なんかよく分からないけど面白い」という意味ですが、僕がその中で、最も大切にしているのはその「非現実性」や「幻想的」なものです。失恋を乗り越えるためには、現実社会から逃げられるものが必要でしたから……(笑)。

“まともに生きる”息苦しさ

失恋をした時もそうですが、時に社会が“まともすぎて”生きづらいって感じる瞬間がたくさんある、と感じています。社会には僕と同様に、傷ついている人はたくさんいる。そしてその中でも、そういう“まともに生きる”“ちゃんとする”ということが僕と同じく、苦手な人もたくさんいると思うんですね。
だからこそ求められるのが「幻想力」。おかしさ、情けなさ、はかなさを表現する、シュールでSF的な世界が息抜きや、ストレスのはけ口になる。“まともに生きる”ためには絶対に必要な場所だと思っています。

「動物の惑星」の実現

ーヴィーガンにはいつから興味を持ち始めたのでしょう?

実は高校2年生の時にも失恋して、その時に人間嫌いになりました。人間を滅ぼしたいと本気で思った(笑)。

それまでにも自然破壊や環境問題に興味がありましたし、小さいころから殺虫剤で殺されるねずみなどに、疑問を抱くことがあって、「人が動物を利用している」ことに疑問を感じ始めました。
そんな中、印象的な夢を見ました。言葉をしゃべるゴリラが武器を持って、人間世界を壊すという「猿の惑星」さながらの夢です(笑)。夢から覚めて、もし本当に現実化したら、動物が人間を地球から追放したら「どうなるんだろう」と考えた始めました。

そうして調べている途中で、ヴィーガンのいわゆる“過激派”がSNS投稿した動画を見て、肉を食べるという行為が僕の考えに合ってないと感じたんです。

動物による人間活動

ー前述した「革命後記」もヴィーガンがテーマになっているということですが、どんな物語なんでしょう。

「革命後記」では動物達が言語を獲得し、人間に対して反逆を起こして、人間を地球の外に追放した後の話を書いています。が、動物と言っても描いているのは、人間模様そのものです。

例えば、人種差別ならぬ動物内で起こる動物差別。シカが隣に座った犬に「犬くさい」と文句を言ったり、反芻(はんすう)するヤギに「食べたものを吐くな!汚いだろ」とののしったりするようなシーンがあります。妄想は僕の得意分野ですから、いつもこんなことを考えています。

この活動で目指しているのは動物解放です。つまり、動物も人間も本当の意味で平等になること。言い換えれば、動物が人間と同じように、権利や言語を持ち、人間的活動を行うまでになることです。これ同化主義と呼んでいます。
今のヴィーガンを広める活動としては、デモや署名活動、ヴィーガンアスリートなどの健康・美容の分野など様々ありますが、僕は根本の価値観を変える必要があると思っています。でも、ご存じの通り価値観を変えるのは、簡単なことではない。

ではどうやったら広まるのか? そこで活用できるのがSF的な面白さだと思います。ストーリーに単純な面白さや、シュールさがあれば、人々は興味を持ちます。そのため「革命後記」は今後、さらに力を入れていきたいと思っている分野です。

街の中でも彼の存在は際立って見える。取材の前の日も京都駅で野宿して、大阪までスクーターを走らせてきた。

人間嫌いが生きやすい世の中を作る

ー事業を通してどんな社会を築いていきたいですか?

少し話をしたのですが、「幻想的」に生きれる社会を築きたい。僕もだけど、まともに生きるのはつらい。だから、そういう人たちにも生きやすい、息抜きのできる場を提供したいです。

ー人間嫌いと聞いていたけど……?(笑)

そうですね。人間嫌いだと言っていて、少し矛盾していることを言っているように聞こえるかもしれないですね。もちろん、人間嫌いでも好きな人間も中にはいます!(笑)

あと、エゴにはなりますが自分にとって生きやすい社会にしていきたいというのも本音です。まともに生きなくてもいい、そんな幻想的な社会ができれば僕みたいな人間でもいきていけるだろうと……(笑)。

会社のことを言えば、2~3年後にはジブリやピクサーと言った、大手アニメ会社が作るようなアニメのクオリティを制作できる地盤を作りたい、と思っています。また、ゲーム制作にも意欲的に取り組んでいきたい。もちろんアニメもゲームも内容は「革命後記」でやりたいですね。そのためには、まずはスタッフを含めた制作環境の整備は必須です。
事業を始めたばかりなので、なんとも言えないですが、その先に見据えるのはずばり株式の上場です。5年後には実現させたいと思っています。

動物たちが所有物ではなく、権利を持ち、普通に投票したり、レストランで食事したりできる社会を築けたら、動物と大好きなゲームをしたいです!

取材の日もやはり首輪。本人いわく犬用とのこと。これで犬の気持ちが分かるという。
違う日に見せてもらった“人工妖精”さん。幻想の声を作り出すことで、寂しい心を癒してくれる役割がある。

★岡本輝起(おかもと・てるき)
1999年11月7日、奈良県生まれ。ニックネームは「てるりん」。高校卒業後、和歌山・奈良・三重仕事探し kiiとNPO法人おてらおやつクラブでインターンを経験。奈良市内のシェアハウスに住居を構えるが、最近はアルバイト先である京都駅周辺で野宿している。趣味は歩いている犬を見ること。元カノに言われた「てるは不思議な生き物だよ」という言葉が人生で一番の褒め言葉だという。

月の管制塔 Note
同化主義について
Twitter @CtrlPgd
@observer_11790


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Mana Kamiya

理事特定非営利活動法人 日本ヴィーガンコミュニティ
『ひつじの。』編集長。地元新聞社の記者になったのち、オーストラリア・メルボルンに移住。現地の日本語フリーペーパ誌でフリーランスライターをしながら、レストランやカフェのアルバイト、ツアーガイドなどを経験。2018年夏に日本に帰国したのち2018年10月より再び新聞社で働き始める傍ら「多様性のある社会」の実現を目指し、いろいろなことに挑戦中。趣味はクライミング。