「40を超えてからヴィーガン。なんでも挑戦したい」植田達也さん

ひつじの仲間はここにいる

「テレビでお肉特集やってたり、仕事場の同僚が焼肉に行ったって言う話を聞くとお肉食べたいな〜って瞬間はありますよ」と笑う植田さん。

ヴィーガン同士では“言ってはいけない感”が漂う「肉食の肯定」。だからこそ、この植田さんの素直な発言には話を聞く側も興味津々だった。

誰もが持ち合わせているかもしれない(言う人は少ないと思うが・・・)その感情を聞いてみると驚くほど、論理的で冷静な考え方。ただ無理している感じは感じ取れない。その真意を聞いてみた。

(取材・写真一部 神谷真奈)

日本で感じられないことを求めて

地元・京都市内の大学を卒業後、地元のメーカー会社で3年勤めたのち、転職。現在は大企業の海外部署で資材をグローバルに扱う業務をしている。海外に出張する機会もあり、香港やシンガポールなど東南アジア地域は1年で数回行く機会がある。「大学在学時にはカナダに1年留学したり、社会人になった後も海外旅行に行ったりしていて元々、海外好き。そんなこともあって今の部署に転職した」と言いい、今年でかれこれ15年勤務している。仕事は「楽しい、うーん、そこそこかな(笑)」と苦笑いする。

カナダに留学時の写真。留学生との交流イベントに参加した植田さん(左)。

職場は休みがとりやすいので、学生のころから好きな旅行にはよく行く。
昨年はインドネシア、オーストラリアに行き、前から気になっていた動物保護施設・サンクチュアリーも見に行った。

「豚肉とか牛肉ってスーパーで切り身の状態で並んでいるイメージしかないでしょ。そのお肉たちが”動物”として目の前に居ること。そしてその動物たちと触れ合うことでやっぱり感情のある命なんだなって改めて感じた」。

2018年に訪れたオーストラリア・メルボルンのサンクチュアリー。広い敷地には羊や鶏、豚がのんびりと暮らしていて「感動しました」。

動物保護の素地

動物保護活動に興味を持ち始めたのは大学生の頃。動物実験に反対するパネル展を偶然見て、大学のアニマルライツサークルに参加してみた。卒業前の1年間、自分も活動を手伝ったがヴィーガンという言葉には出会うこともなく、社会人になってからは、いつの間にか動物保護の活動から離れていった。

だが、41歳になった2017年夏のこと。たまたま訪れた旅館で昔読んでいたDays Japan※1という雑誌をみつけた。パラパラと読んでいると、衝撃的な特集を発見する。それは漢方薬に使われるためにセンザンコウという野生動物が密猟される様子を収めたもの。写真が生々しく、語りかける。

「殺されている動物の表情がとてもショックで。頭から離れなかった」。

Days Japanは以前から読んでいたし、動物保護の話を聞く機会はこれまでも何度もあったが、特に心は動かなかった。しかし、その時は「動物の問題にちゃんと向き合わないといけない」と考え始めたのだ。インターネットや本で調べるうちにヴィーガンという考え方を知り「『これをやらなければ』ってピンときた」。

食生活に関して言えば、最初は肉を魚に代えた食生活にしていた。しかし、ふと参加したヴィーガンフェスティバルで「魚もおかしい」と気付いた。育てられる過程や環境は自分が思っている以上に不自然で「そういった魚を食べるのが嫌だし、こんな状態で育てること自体がおかしいんだなって」。卵や乳製品も同じような理由で、辞めていった。

「それからご飯、味噌汁、納豆は3種の神器(笑)。美味しいし、楽だし、言うことないでしょ」。

普段の食卓。仕事もあるので帰ってぱぱっと作れるものが中心で、いつも”3種の神器”がある。

ただ、ヴィーガンを始める前は食事をすること、肉を食べることは1日の楽しみの1つだった。そのため、今でもテレビ番組で美味しそうな肉を見ると、ときどき“葛藤”が生じる。

「そりゃ『食べたいなー』ってね。でも、“ひとときの楽しみ”と“動物の命”を天秤にかけた時に前者に傾くことは僕はない。実際、その一瞬を我慢すれば、大丈夫。ヴィーガンでも美味しいものは作れるから」。

ジレンマを抱える中で

しかし、職場ではヴィーガンとは打ち明けられずにいる。「ちゃんと聞いてくれて、興味を持ってくれる人たちもいるかもしれないけど、“変わった人”という噂が一人歩きして、仕事をやりづらくなるかもしれない」と感じるからだ。

過去には、クジラを食べないという海外の人をわざわざクジラを出す店に連れていったと笑いながら喋る同僚がいたこともあり「偏見とかもあるんじゃないかな」とまだ一歩踏み出せない。そのため、職場での飲み会は動物性のものを食べるのは避けるのが難しいこともある。

一方で約半年前からは月に1、2回、大阪城近辺でキューブ活動をしている。観光客も多いので立ち止まって、話を聞いてくれる人も多くいる。「やっている自分自身も(周りの人からみたら)怪しいのでは?と思いつつやっている(笑)。でもなんでもトライしてみたいなって。そういう時期なんだと思う」。

「週末に行うキューブ活動。声をかけるとじっくり話を聞いてくれる人も結構います」

昔から猫が大好きだった。今でもそれは同じで、猫と同様にどんな形であれ、他の動物の命も奪いたくない。

「動物が搾取されている現状が表に出ていないだけで、みんなが本当のことを知れば早かれ遅かれヴィーガンは増えていくんじゃないかな。ヴィーガンという言葉を合言葉に仲間を増やしていきたい」。

40代になってヴィーガンに目覚めた。その旅はまだ始まったばかりだ。

★植田達也(うえだ・たつや)

1976年8月10日、京都市生まれ。現在は大阪・十三に住む。一人暮らしを始めた時から10年ほど寄り添った猫と1年前に別れを告げ、現在は山口からやってきた保護猫・はなちゃんと一緒に住む。家に猫はいるが「保護猫カフェが好きで・・・」とほかの猫に浮気することも。海外ドキュメンタリー映画を見ることも好き。今後は、スペイン語、ロシア語、アラビア語などを覚えて「目指せ5ヶ国語マスター!」と意気込む。

※DaysJapanは写真を効果的に用いて主に戦争、環境保全などの社会問題を広く取り上げる雑誌。2019年3月に休刊した。

山口から保護した愛猫のはなちゃん。グレーの毛並が特徴で、遊び盛りだ。

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Mana Kamiya

理事特定非営利活動法人 日本ヴィーガンコミュニティ
『ひつじの。』編集長。地元新聞社の記者になったのち、オーストラリア・メルボルンに移住。現地の日本語フリーペーパ誌でフリーランスライターをしながら、レストランやカフェのアルバイト、ツアーガイドなどを経験。2018年夏に日本に帰国したのち2018年10月より再び新聞社で働き始める傍ら「多様性のある社会」の実現を目指し、いろいろなことに挑戦中。趣味はクライミング。