ベジ×ノンベジ夫婦、ライフスタイルの違いをどう乗り越える?ーneoベジ東川夫妻

ひつじの仲間はここにいる

ヴィーガンはヴィーガンとしか付き合えない?

あなたがヴィーガンなら、悩ましいと思うことは何度もあったことでしょう。意中の相手や友達とご飯を食べに行く時、店をどうしようとか、どうヴィーガン説明しようかと「ああでもない」「こうでもない」と思案を巡らしたことが……。

では、パートナーや妻/夫がヴィーガン(ベジ)ではなかったら?みんなどうしているの?何を作っているの?と、悩みを抱える人は多いはず。

そんなベジ×ノンベジのカップルがどのように出会い、どのように“違い”を乗り越えているのか直撃した「ひつじの。仲間」特別企画。

今回は、京都市内で“Neoベジタリアン”料理教室を営む東川恵里子さんと、その夫・誠さんカップルをご紹介します。

(取材、写真・ 神谷真奈)

東川夫妻プロフィール

誠さん(右)、1972年9月3日、京都市生まれ。恵里子さん(左)、1970年2月24日、徳島生まれ。恵里子さんは8年前より料理教室を開校。約1年前からは京都市内にあるビルの一角に料理教室を構え、指導者養成コースなど月10回レッスンを行う一方、雑誌のコラム等も執筆するなど精力的に活動している。誠さんは飲食業、不動産業、ヨガインストラクターなどを経て、現在は同料理教室を一緒に運営している。5歳になる次男・楓(ふう)くん(真ん中)と一緒に3人で暮らし、22歳になる長男・優さんは今年春に就職して、東京で一人暮らしを開始した。

裸族の家に転がり込んだ年下の男

ー最初に、お二人の出会いを教えてください。

恵里子 出会いは私がタイル装飾アーティストとして活動している頃にさかのぼります。当時24歳とかそんなんだったと思うんですけど、ちょうど京都市内で展示会をすることになって。そのビラ配りのために、インドネシアパブに立ち寄りました。その時たまたま、誠さんを知り合いから紹介してもらったのよね。

 紹介してくれたのが当時、僕が働いていた飲食店の先輩。恵子さんはいかにもその先輩目当てって感じで、僕はまったく眼中にないっていう感じが見え見えだった(笑)。

恵里子 実際そうでしたね。その先輩にその日何回も好き好きって言ってアピールしたの覚えています。その後、狙い通り3人で私の家に行こうってことになって、心中「よっしゃあ!」って雄叫びを上げてました(笑)。それなのに、直前でその先輩が行かないってなって、超ショック。ただ、そこで「じゃあ」と言って別れるわけに行かなかったので失意の中、結局、誠さんと2人きりで私の家に行ったんですよ。そしたら誠さんは、玄関で寝るって言い張って(笑)

 そりゃ先輩の女友達ですよ。手を出すとか絶対にありえなかったし、女性の部屋で2人きりっていのも気まずいでしょ。

恵里子 そんな誠さんを無理やり、同じ布団で寝るように説得しましたよ。ただ、私は誠さんにまったく興味がなかったので(笑)、服だけ脱いで(※恵里子さんは裸族)ささっと寝たんです。

 こっちからしてみたら「なんでこの人は服脱ぐんだ?!」って内心びっくりでした。変に緊張したので朝まで寝られなかったことを覚えています(笑)。結局その夜は何もなかったんですけど、そこから恵里子さんの家に居候することになって、そのまま付き合うことになったんだよね。それからもう23年、一緒にいます。

 

ー23年ですか。

恵里子 そうだね。誠さんが居候するようになって3カ月後には長男を妊娠して、結婚してって感じであっという間に23年経ったなぁ。

お互い仕事も変わったし、子育てや色々な人生のイベントを経て考え方が変わったから、これまで何度も別れよう、離婚しようっていう話もしてきたなぁ。だけど、今はすごい幸せ。次男も生まれたから、またこれから頑張らなきゃなって話していたところやね。

出会ったころのことをまるで昨日のように語るお二人。取材の中で一番イキイキしていました。

ベジタリアンを超えた”Neoベジタリアン”

ーでは、今のおふたりのライフスタイル(食生活)を教えてください。

 僕はヴィーガンではありません。ただ、家では恵里子さんが料理担当なんで、ほとんどヴィーガン。ただ、時々お肉は食べたくなるし、幼い次男にも様々な食材にチャレンジして食べれる物の幅を増やしてほしいので、家で肉や魚をリクエストするときもありますね。ただ、結果的に次男は動物性のものをあまり好まないので、ほぼヴィーガンになってるけど(笑)。

恵里子 私はヴィーガンだけど、“Neoベジタリアン料理教室”を開いているんですね。なので、他の方とは菜食への考え方が少し違うかもしれないな。

Neoベジタリアンって、私のオリジナルの言葉なんですが、ベースはヴィーガンで作るのだけど食べる人の判断で何を入れても、何と食べてもいいですよっていう考え方のことです。例えば、サラダをヴィーガンで作る。それをそのまま食べても美味しいのだけど、もしあなたが、それに魚を乗せて食べたい気分ならそうすればいい。「好きにして!」って言ってあげるんです。そんな感じなので家でも誠さんの好きな様に食べてもらう様にしています。

 

ーどうしてNeoベジタリアンになったのでしょう?

恵里子 それは次男出産後の「鶏ガラスープ事件」の影響ですね(笑)。

 僕が鶏ガラスープを作って病院に持って行ったんです。高齢出産だったということもあって、恵里子さんは産後、体調が優れなくって。どうにかできないかって考えた時に、以前恵里子さんが「体温が下がっているときは鶏ガラが一番だ!」という話をしていたなと思い出したんです。そこで、新鮮で安全な鶏ガラを買ってきて、自家製スープを作り、コンロごと病院に持ち込みました(笑)。病院でそんなことしていいか分からなかったけど、いけるだろって感じでね。

恵里子 鶏ガラスープと聞いて私としては「え、ヴィーガンなのに、それ?!」って驚いたわ(笑)。当時はすでにベジタリアン料理教室を開いていたから、そんな私に動物性のものを差し入れするなんて考えられなかった。

ただ、優しさが伝わってきたし、一口飲んでみたら、すごい元気になってね。それで「今まで自分は、なんて小さいことしてきたんだろう」って思えました。そうしたら涙が出るほど感動して……。そこからですね、基本の食事はヴィーガンだけど、体調が悪い時などには動物の命を頂いて元気になることは「悪いことではない」と思った。そうしたら、肉を食べる人も、魚を食べる人もALL OKなんじゃないかなって考えに至る様になったな。

 僕はお肉を食べる食べないに関わらず、自分の食べているものにもっと敏感になる必要性があると日々感じています。今は特に添加物の勉強をしているから、食に対する興味という点で、恵里子さんと共通点がある。だからこそ、彼女のやっていることを応援するし、したいと思えますね。

高齢出産で誕生した楓くん。「可愛くて仕方がない。まだまだいっぱい働かないとね~!」と恵里子さん。

 

ストレスは相手にぶつけるものではない

ーそもそもどうしてヴィーガンに?

恵里子 もともと長男がひどいアトピー持ちだったから、小学校に上がる時ぐらいからマクロビを実践してたのね。で、ある日、マクロビの先生から勧められた本を読んでいると「動物性食品を少しでも口にするとがん細胞が大きくなる」と書いてあるページを見つけて、衝撃を受けたんです。そこで「動物性のものは家族には食べさせられない!」とすぐに思い、食生活を変えたのがきっかけだったな。

 長男は、植物性食品のみを食べるようになってから症状がすごく良くなってね。

恵里子 そう。中学、高校と6年間ヴィーガン弁当を作って長男には学校に通わせましたよ。「肉なし弁当」を持っていくから、学校で長男は“ヴィーガンキャラ”を確立。大豆ミートの焼き鳥風とかを作ると「『肉食ってるやん!』ってツッコまれるから母さんやめて」って言われたこともありました(笑)。

 

ー誠さんは肉が家で出てこない生活は正直、どうでした?

 いや〜、ストレスになったこともありましたね。当時は不動産業をやっていてすごく忙しかったのもあって、今みたいに食生活に気を使っていたわけでもなかったから。帰ってきてお肉が食べたいと感じる日は特にね、つらい。食事は1日の楽しみそのものだし。

恵里子 特に始めた最初の3カ月は糖分、油分もカットしていたので、つらかったと思いますよ(笑)。

 それもあった。ただ、家族がヴィーガンを始めて、嬉しかったこともあります。恵里子さんが家にいるってこと(笑)。それまでは夜遊びが好きで、帰ってきてもクラブやバーに出ていて、家にいないことがほとんど。それが一変、家でパンを焼くような人になったからな。

恵里子 「恵里子さんが家におるー!」って喜んでくれていたね(笑)。ヴィーガンになってマクロビとはまた違う調理方法ができるようになったから、研究心からパンやお菓子作りに没頭していた時期がありました。

 そうやね。家で作るもののバリエーションも増えていくから、それも最初は嬉しかったけど。ただ、菜食は子供優先で始めたこと。もし自分が嫌であってもやめろとは思わなかったし、僕の場合は昼も夜も、ひとりでご飯を食べる時もたくさんあったから、お肉が食べたいと思えば食べられる状況にあったからね。ストレスが爆発するようなことはなかったのかもな。

談笑する東川夫妻。

ー逆に恵里子さんは肉を食べる誠さんをどう思っていました?

恵里子 自分の体じゃないからな、って思っていた。もちろん、食べて欲しくはないから、懇々と説明することもあったと思いますが(笑)、それでストレスになったということはなかったかな。どうしてかって今考えてみると、私はきちんと“発信”をできていたからだと思うなぁ。料理家として菜食を伝えている立場だったから、家庭内で「菜食を広めたい」とはならなかった。それに当時から料理教室の参加者さんも、普段は肉を食べるような人ばかりで「超肉食系ベジタリアン」と呼ばれていたので、肉食に対してもそこまで抵抗はなかったしね。

 あれから僕自身もすごく変わったからね。不動産業を辞めてヨガをやり始めたことも、食事を本気で意識し始めたことも、やはり傍で発信をし続けてきてくれた恵里子さんの影響は大きいと思う。直接的に「肉を食べるな」ではなくて「肉を食べることってどういうことなのか」とか「肉がなくてもこんな食べ方ができるよ」って外に向かってポジティブに表現している人が近くにいることが、変化の原動力になったんだと思う。それがあったからこそ、自分で考えて自分で気づけたんだなって。だって、人に言われたからって簡単に人は変われないからね。

 

夫婦は歩み寄りの連続

ーノンベジの恋人を持つベジさんからはよく、どう相手にベジ料理を好きになってもらえるか、どうやったらヴィーガンという考え方を理解してもらうかと悩んでいるという意見を聞くことも多いです。その方々にアドバイスありますか?

 やっぱり話し合い、それに尽きるかな。肉なしって聞くだけで偏見というか抵抗を持つ人もいるかもしれないけど、ヴィーガンであってもなくても、みんな食事が美味しければさほど、気にしないと個人的には思うけどな。だから相手が好きな味付けを知ることが第一歩ではないかな。

恵里子 そうだね。ベジタリアン、ヴィーガンの人って、正直味付け薄いからその辺は自覚して料理しなきゃダメね(笑)。やっている本人は「自分は変なんだ!」って思った上で、料理を食べる人のことを考えて調理をする必要があると思います。

あと、よくベジの人が陥りやすいのって「自分のことを理解してほしい」と思うがあまり、結果として家族や友人に対して攻撃的になってしまうと思うのね。それは自己成就のために周りを利用しているだけ。私も「これって自分の意識の押し付けなんじゃないか」とか自問自答しつつ、お互いが歩み寄りれるポイントを一緒に見つけていきましたよ。

 僕たちも、もちろんそうだった。夫婦の話し合い、歩み寄りは夫婦間にあるすべての事柄に言えることなので、ヴィーガンに限ったこと話ではないよね。

恵里子 ごもっともです(笑)。ヴィーガンを説明する時にも「肉なし、卵なし」ではなく「植物性のみ使用」の方が感じがいいし、美味しそうな写真を見せながら「これ今度食べてみない」って言った方がポジディブに思ってくれるだろうし。

 ノンベジ側がすることと言えば、相手の作る料理にバリエーションを求めないことかな。調理方法や料理が固定されてしまうのは仕方がない。プロの料理・恵里子さんであっても毎日違うものを作るのは難しいんだから、まずは作ってもらったら、感謝して、感謝の気持ちを示すべきだと思う。もしバリエーションがなくなっちゃえば、シンプルに食べることをお勧めするのもありだよね。男性も女性も、ツウな食べ方ができる人ってオシャレでしょ。野菜は塩で食べるとか、かっこいいじゃないですか。そういう風に持っていくとかね。

恵里子 それも1個だね。味付けに関して言えば、ベジタリアン料理は独特です。野菜では絶対に補えない動物性の旨味をいかにカバーして、美味しくさせるか、というのは勉強しないと身に付きません。私の料理教室では詳しく教えているので興味のある人は是非覗いてくださいね~。

京都にあるneoベジタリアン教室。色鮮やかなタイル張りが目を引くキッチンはおしゃれ。教室には日光がたくさん入ってきて、とても居て気持ちがいい。

食で紡ぐ一緒の時間

ー東川夫妻にとって食とはどんなものでしょう。

 食事は体をなすものだよね。あと、食事、特に晩御飯って家族が1日の中で一番一緒に居やすい時間だから、その時間ってすごく大切なもの。

恵里子 価値観や生活スタイルが違う中で、晩御飯の時間は唯一共有できるっていう人も多いと思います。その時間をいかに濃くするかって必要よね。

 食べるものは人を繋ぐし、自分の健康にもつながる。今は食品添加物評論家として著名な阿部司さんの認定講座を受けているんだけど、つくづく思うのが「ヴィーガンだけで終わるのはもったいない」ということ。肉に限らず、添加物とか、農薬まみれの野菜とか体や環境に悪いものはたくさんあります。もっともっと食に関心を向け、自分の目で判断したものを選択して食べる世の中になっていくし、そういう目が必要だと思います。そういう面で、恵里子さんと力を合わせてやってみたいことがたくさんあるなぁ。

恵里子 私も、誠さんと100%やりたいことが一緒なわけではないんだけど、向かっている方向が合っていて今は、すごく楽。だから、本当に感謝しているし、恵まれていると感じます。だから23年経っても、出会った頃と変わらずラブラブです(笑)。カップルや夫婦間のことはたくさん悩み事があると思いますが、変化には時間がかかります。歳を重ねるにつれて、考え方がお互い変わっていくことを理解しつつ、期待しつつ、歩んでいく必要がありますね。

 僕たちもまだまだその途中、感謝しつつ残りも歩んでいければと思います。

ラブラブした雰囲気でとお願いしたら、こんな写真に。仲のいいお二人。

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Neo Vegetarian Cooking ~ericoのしあわせNeoベジライフ! ~

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「おふたりの馴れ初めは?」と聞いて45分……本当に一から十まで教えていただきました(本文ではかなり割愛しております、すみません)。出会った当時のことをイキイキと喋べる2人は「出会った頃のことを昨日のことのように語るのがラブラブの秘訣やね」とニヤリ。

日本ヴィーガンコミュニティの(一応)理事として活動し「ひつじの。」編集長でもある私はオーストラリアでヴィーガンを知り、フレキシタリアンで日本で生活をしているからあまり実感がなかったのだが、ヴィーガンは恋人を作りづらいとも聞いたことがあり、今回の企画はわくわくしながら執筆しました。

結果、カップルにヴィーガンは関係ないことってことが分かりました。夫婦の基礎が出来てれば、超えられないものはない。そういうことみたい。

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Mana Kamiya

理事特定非営利活動法人 日本ヴィーガンコミュニティ
『ひつじの。』編集長。地元新聞社の記者になったのち、オーストラリア・メルボルンに移住。現地の日本語フリーペーパ誌でフリーランスライターをしながら、レストランやカフェのアルバイト、ツアーガイドなどを経験。2018年夏に日本に帰国したのち2018年10月より再び新聞社で働き始める傍ら「多様性のある社会」の実現を目指し、いろいろなことに挑戦中。趣味はクライミング。