「動物の幸せ、自分の幸せを。アニマルフリーファッション、あと3年で実現させる」宮本航さん

ひつじの仲間はここにいる

「本当に感謝の気持ちでいっぱい。やっとスタートラインに立てた」。顔いっぱいに笑顔と安堵の表情が広がった。宮本さんが代表を務めるアニマルフリーブランド”doves”は2月初旬から1ヶ月間にわたるクラウドファンディングを終えた。達成率は106%、合計で320,147円の支援金が集まり、大成功を収めた。

「実はアパレルの仕事が大好きだったという訳でもないんです(笑)」という彼のファッションに対する思いと今後の目標を聞いた。

dovesはクラウドファンディングで目標金額を超え、大成功を収めました。宮本さんのプロジェクトに対する願い、思いは「ひつじの。ニュース」にも掲載しています。記事はこちらから。

(取材・文・写真一部 神谷真奈)

「なんとなく」から「したいこと」へ

小さい頃から動物保護に興味があったという訳ではない。ハムスター、トカゲなどを飼ったり、今も住んでいる実家には13歳になるミニチュアダックスフントがいたりするが、それぐらいで動物が好きな“普通”の少年だった。

そんな宮本少年の小さい頃からの夢は獣医。きっかけはある日、家族と車に乗って出かけたときに見つけたツバメ。ひどく弱っていたので、近くの動物病院に連れて行ったのだ。「そこの獣医さんが丁寧に治療をしてくれて、再び空へ元気よく飛び立った姿があまりに感動的で『これだ!』って直感的に思った」。

だが、結局大学は国際経営学科へ進学。「勉強が好きじゃなくて(笑)。なんとなくっていう理由で大学を選んでしまった」。ろくに授業も聞かず、卒業後もまた「なんとなく」とある会社に就職。だが、3ヶ月ですぐ辞めてしまった。その後はアパレルをはじめとしたアルバイトを転々とした。

動物保護団体で働いていた頃の写真。「目の前にある救うべき命を助けることはもちろん必要だけど、僕がするべきことはその前段階。つまり、粗末に扱われてしまう命を1つでも減らすために、こんな問題が起きていると周知すること」と思った。

一方で「動物のために何かしたい」という思いはいつも心の片隅にあった。そんな時印象に残ったのが「命の期限」という文字と共に投稿されていた犬や猫の写真。動物保護団体のSNSに投稿されていて、居ても立ってもいられず犬猫の保護団体で働き始めた。しかし「自分が思っていることと現実は少し違って、それもすぐに辞めてしまった」。そしてまた戻ってきたのがアパレル業界だった。

「大学の時からアパレルの仕事はやってきたけど、実は大好きだったという訳でもない(笑)。正直、アパレルって重いものを持ったり、せかせかしたりする仕事ではないから飲食店などの仕事よりも僕にとっては楽だった」。

だが反対に働ければ働くほど、アパレル業界にはびこる社会問題に問題意識を感じるようになった。大量消費の裏にある大量廃棄、コットンなどの栽培による環境汚染や途上国での過酷な労働環境など「服飾業界が世界に与える影響は大きい、だからこそ自分ができることは何かないのか」と感じ始めた。

アルバイトでアパレルショップに勤めているころの宮本さん(2列目一番右)。仕事は楽しかったが、アパレル業界に疑念を抱き始めたころでもある。

「かっこいい」から社会を考える

そんな時、出会ったのがヴィーガンだった。「約2年前からヴィーガンを少しづつ始めた。きっかけはネット上で見た『動物保護をする人は犬や猫は助けるのに、牛や豚は食べるんですね』というコメントだった」。

それまで肉食に疑問を感じたことはなかったが、“とりあえず”一度肉食をやめようと思った。「マック、ファミレス、牛丼屋など肉ばっかりの生活だったけど、そういう“軽い気持ち”で始めたのが功を奏したのかな。肉や魚をやめることは自然とできた」。

動物保護団体での仕事を辞めた後、渋谷のセレクトショップで働いていたころの写真。

しかし一番、困ったのが革製品だった。

「それまで“全身レザーコーデ”の日もあったぐらい、レザー好きだったので革製品が買えなくなったことが本当に残念で」。だからといってなにかの犠牲の上に生産されたレザーや素材を使った服を着ることには抵抗が芽生え始めた。

そこで、エシカルファッションについて調べ始めたものの「『僕のスタイル』とまったくあっていなくて……。ヴィーガンファッションっていうと”ナチュラル“志向のものが強くて、色合いや素材も僕は好きになれなかった」。

そこでヴィーガンだけではなく、あえてファッション性を前面に押し出し、一般の人をターゲットにしたアニマルフリーブランドを作りたいと思った。「それって『僕だからできること』でしょ」。これが2018年の始まりだった。

 

「目指す『僕のスタイル』っていうとまだ僕も実現できていないけど『自分が100%納得出来るスタイル』のことかな。一般的な『イケてる』とか流行のファッションではなくて、大好きだって思えるお気に入りの1着、スタイルを身につけること。だから、このブランドを立ち上げた理由は『自分のため』でもある」。

実はファッションへ興味が湧いたきっかけはコンプレックスだった天然パーマ。「今もだけど僕、昔からひどい天パで(笑)。友達とかにいじられるのがすごい嫌だった。それで中学生の時に縮毛矯正をしたら、髪がストレートに。それはすごい気分が上がって!」

「そういう経験って誰しもあることだと思う。誰かから見た『かっこいい』ではなく、自分の納得できるものを身につけること。それによって気分が上がったり、下がったりする、この『心の変化』にすごく興味がある」。コンプレックスを直して、自分を総合プロデュースする面白み。それがファッションブランドを立ち上げた根本にある。さらに「これまでに社会問題に興味のなかった若者がたまたま手に取ってみた『カッコいい』ものから、肉食や環境問題を考えてくれたら理想だなあ」。

自分を縛って、高みを目指す

クラファンを始めた時期にも訳がある。「昔から24と27という数字が好きで、本当に『なんとなく』だけど24歳から27歳の間に自分が納得できることを成し遂げたいって思ってきた」。クラファンを終え、25歳になった。なので予定としてはあと3年。「27歳で死ぬ設定で生きてる。だから今しなきゃ間に合わないと思って(笑)」。

 

気持ちの変化もあった。実は今回のクラファンの前にも一度、自身のブランドを立ち上げようとした。しかし、身が入らず、おじゃんになったことがあった。

でも今回は「周りに応援してくれる仲間もたくさんできて『何が何でも成し遂げてやる』っていう覚悟ができた」。

そして他にも成し遂げたいと思っていることができた。「まずは知名度や影響力を得ること、財力を得ること、人間的な成長をすること、中目黒に住んで電車に乗ることからおさらばすること……そしてその先に待つのは憧れの芸能人と仕事をすること(笑)」。

憧れの芸能人はここでは秘密だが、すごく大好きなアイドルグループがいる。「ライブに行ったときに『楽しい』というより『悔しい』っていう気持ちがあって。ステージの上に立つアイドルと、そのアイドルを応援する数千人の中の1人。この“差”を埋めて『同じステージに立ちたい』と思った」。

大好きなアイドルのライブにて。キーホルダーやタオルなど全身グッツだらけ。動物保護団体の仕事を辞めた直後で、今後どうやって動物のために生きていこうか不安を抱えていた。

「同じレベルで同じ世界を見れるか」ー。憧れの人と一緒に仕事をするという目標を持つことで自分を高め、ビジョンである「人、動物、環境みんなに優しい世界の創造」を目指す。

「クラファンが終了した直後からヴィーガンのセレクトショップであるLOVST-TOKYOの店長も任され、活動が本格化している。すごく忙しいけど、今はやりたいことを全力でやりたい。なんと言っても僕にはあと3年しかないから」。

 

★宮本航(みやもと・わたる)

1994年3月7日、東京都生まれ。大学在学時、アパレル店で勤務経験があることを活かして卒業後、大手着物ブランド店に就職するも半年後には退職。アルバイトを転々する中で「動物にためにできること」を模索し、ヴィーガンファッションの道を選ぶ。最近は「クラファンのために始めた」というカメラが趣味。


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Mana Kamiya

理事特定非営利活動法人 日本ヴィーガンコミュニティ
『ひつじの。』編集長。地元新聞社の記者になったのち、オーストラリア・メルボルンに移住。現地の日本語フリーペーパ誌でフリーランスライターをしながら、レストランやカフェのアルバイト、ツアーガイドなどを経験。2018年夏に日本に帰国したのち2018年10月より再び新聞社で働き始める傍ら「多様性のある社会」の実現を目指し、いろいろなことに挑戦中。趣味はクライミング。