「ヴィーガンを伝えるやり方が違ってもみんな同じ方向へ進んでいる」多田直樹さん

ひつじの仲間はここにいる

「こんばんは」ー。

寒い日が続いた冬の夜、ライターととあるバーで待ち合わせた多田さんは目深に帽子をかぶり、柔和な笑顔を浮かべて入店してきた。穏やかで、ごくごく”普通”そうに見える多田さんは、休日になるといつものイメージから一変する。

「メンバーらで作ったお手製のパネルを突き上げながら『毛皮買うなー!』って叫ぶんですよ(笑)」。

そう、アニマルライツ活動家として活動しているのだ。ヴィーガンに出会う前までは「こんな活動をするなんてと思っていたから変化には自分でも驚き」だ。
ヴィーガンに出会って約6年が経つ。さまざまな人生経験を持ち、いろいろなことを肌で感じてきた。ヴィーガンに対する考えも一辺倒ではなかったという多田さんに、ヴィーガンになったきっかけや、ヴィーガンに対する今の思いを聞いた。

(取材・文・一部写真 神谷真奈)

やりたいこと、できること

現在、大阪市内でケアマネージャー(以下ケアマネと省略)として働き、自身の事務所を持って今年で7年目になる。

が、それまでの道のりは“安定”とはほど遠い、異色なものだ。

福祉系の専門学校卒業後、老人ホームで3年勤務したのち一念発起して韓国へ1年間留学。帰国した後は介護系の職場、コンビニ、伊丹空港や羽田空港で働いたり、キャビンアテンダントになる試験も受けたりと、転職は数えきれないほどしてきた。「1箇所に留まる人生は嫌だって思ってたから、チャレンジし続けようって」。したいことを思いっきりして、気がついたら35歳手前。就職できる最後の年だと感じ、再度福祉職へ戻ると決めた。

韓国に留学していた頃。なんとも初々しい表情の多田さん(2列目右)。
各航空会社に送った宣材写真。何社か最終試験には残ったものの「英語がネックで・・・落ちました」。

選んだのはケアマネ職。体力仕事でもなく、経済的にも負担はなくなった。

しかし、人間関係で悩みが生じた。「周りが自分に期待していることと自分のやりたいことに溝が生じ、苦痛に。そこで自分で事業を起こそうと思った」。

ケアマネは高齢者が在宅生活をするにあたり、相談や要望を聞き出し支援方法、サービスや施設利用を提案する仕事。「カウンセリング業務が中心で、人と話すことが好きだったので自分に合ってるなって。環境にも恵まれ、ここまでやってこれた」。

介護現場で働く多田さん(左)。

人は変われる

事業が軌道に乗り始めた2012年頃、“動物愛護”という考えに出会った。

それまでとりわけ動物が好きであったわけではない。が、ひょんなことから当時1歳の猫「チャロ」の里親になったのだ。

飼い始めて数ヶ月後、きっかけはやってきた。大阪・天王寺で犬や猫が動物実験に使用されているパネル展を偶然見たのだ。

猫を飼うまではきっと、なんの気もなしに通り過ぎていた写真。

しかし、考えられずには居られなかった。

「家で飼っている猫と、この猫は一体何が違うんだろうか……」。気持ちが落ち込んだ。さっそくパネル展の主催者と連絡を取り、数日後にあった動物愛護のデモにとりあえず参加することに。その後、流れで何度か参加するうちに、他の参加者からヴィーガンについて教えてもらった。

デモや街頭パネル展などの内容は動物実験、ファー、肉食など様々。

「シュークリームとかエクレアとか大好きだったので、なかなか卵や乳製品はやめられなかったけど……」1年間かけて徐々に動物性食品を辞め、ヴィーガンになった。

「それまではデートで水族館に行き、仕事帰りに牛丼を頬張り、お腹が空いたらコンビニでフライドチキンを買う。そんな”普通“の生活を送っていた。そんな生活が小さな『気づき』で大きく変わった。ヴィーガンは難しいことではない」と感じる。

十人十色の活動を尊重する

人生を変えたアニマルライツ活動には個人で今でも参加している。一方で、そんな自分を変えてくれたデモ活動やパネル展に参加することに葛藤を抱えた時期もあった。

「同じヴィーガンからも『攻撃的な活動は攻撃的な姿勢を相手に植え付けるだけ』と言われることもたくさんある。またデモの参加者内でも、いざこざがあるので正直、参加することに迷いが生じたこともあった」。

それでも今は、ヴィーガンが広まることに繋がるなら色々なチャンネルがあった方がいいと考える。

「どのチャンネルによって人の考えが変わるか、それは誰にもわからないし、どれが正解って人によって違う。だからこそ、表現の仕方はさまざまな形があるべき。街頭活動で『〇〇反対』と訴える人も、楽しくハッピーに『健康食ビーガン』って訴える人も必要だと思う。さまざまな形があっていいと思ったからこそ、日本ヴィーガンコミュニティにも加入しようと思った」。

キューブを見たことのないライターに「こんな感じ」と見せてくれた。「映像を見せる人は通常お面をかぶったり、無表情で行うことで客観的な事実を与える役割。興味を持ってくれた人に話しかけるアウトリーチはコミュニケーション能力がかなり求められるので大変ですね」。
化粧品ブランドLUSHで活動をした時の写真。

加入したコミュ二ティでは「今はサポーターとして活動を見守りたい」という。「ヴィーガンを実践しやすい社会ってどう実現していくか、それはまだ誰にも分からない。多種多様な人から出てくる意見を尊重し、サポートしていく必要があると思う。方法は違っても、みんな向かっているところは同じだと思うから」。

“結果”がすべてー。

少しづつ、徐々でもいいからヴィーガンが広がればと切に願っている。

★多田直樹(ただ・なおき)

2018年10月末で46歳を迎えた。趣味はノンヴィーガンをヴィーガン店に連れて行くこと、ヴィーガン商品やヴィーガンレストランを開拓すること、とヴィーガンは多田さんのライフワークとなっている。また「テレビっ子なんで最新情報には早いですよ」とニヤリ。今は“人生を変えた”チャロに加えて、カモメ、ミカンの3匹の猫と暮らす。


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Mana Kamiya

理事特定非営利活動法人 日本ヴィーガンコミュニティ
『ひつじの。』編集長。地元新聞社の記者になったのち、オーストラリア・メルボルンに移住。現地の日本語フリーペーパ誌でフリーランスライターをしながら、レストランやカフェのアルバイト、ツアーガイドなどを経験。2018年夏に日本に帰国したのち2018年10月より再び新聞社で働き始める傍ら「多様性のある社会」の実現を目指し、いろいろなことに挑戦中。趣味はクライミング。