「食卓に〈喜怒哀楽〉がある生活を」隈本由夏さん

ひつじの仲間はここにいる

「今日は三重に帰って、明日はまた大阪に戻ってきてレッスンです。そしたらまた高知にとんぼ返り。忙しいです」

    大阪・梅田のカフェで落ち合った隈本さんはいつも以上に忙しそうだ。ただ、その顔には満天の笑み。女優を目指して受けた事務所のオーディションに最近、受かったと言う。

「女優は小さい頃からの夢で諦めきれない。それと同じくらい、私は料理にかけてます」。

料理はもともと好きだったが、とりわけ食生活に気をし始めたのは両親が離婚してからのこと。「別々に住んでいる両親の食生活を見て、心配だなって」。いつまでも元気でいてもらうには、健康的な食事が欠かせないからだ。「自分たちが食べるものをきちんと管理できれば、ぴんぴんころりで死ねる(笑)。それが理想ですね」。

現在、大学で栄養学を学ぶという彼女にその意味を聞いた。

(取材・文・一部写真 神谷真奈)    

全ての原点・食

栄養学を学びたいと思ったのは、海外留学経験がきっかけだ。

元々海外の文化や言語には興味があり、高校2年生の夏フィジーに1か月間滞在。そのときに、食べ物が日本と大きく異なり「食べ物で人は変わる」と実感した。また小学校高学年の時には日本料理の料理人である父が糖尿病になったこともあって「食べるという行為は幸せなことだけど、その食事によって病気になるのは本末転倒なのではー」と思い始めた。

高校生の時の隈本さん。

そこでふと頭の中で思いついたのが

【食べ物を改善】→【病気になる人が減少】→【日本が元気になる】

というイメージだった。「どんな食生活をすれば病気にならないか人々が理解して、自己管理できるようになれば最後まで笑顔で生きることができる」。そんな思いで2018年4月に高知県立大学の栄養学部に入学した。

たかが食事、されど食事

    一方、ヴィーガンに出会ったのは高校3年生になってすぐのこと。栄養学に興味が出始めたこの時期、大好きだったコーギー犬が13歳で亡くなった。

「もう少し早く病気に気づいてあげられたら……。すごく悔しかった」。

そして疑問に感じたのがペットはどこから来るのかということ。それがインターネットで屠殺場の動画を見るきっかけになった。ヴィーガンという言葉に出会ったもの、その流れでだ。動物性の食品を取らないという考え方は素晴らしいと思った。しかし、それまでは“肉とご飯のみ”という食事がほとんどで決断には慎重な判断が必要だった。

「動画を見てから1週間悩んだ。『本当に私にできるかな』って。具体的に食事をどういう風に変えようかとか、近所にあるレストランでは何を食べようかと考えた。それでなんとかなるかなって結論に(笑)」。

そして2017年5月、晴れて“ヴィーガン宣言“をした。

高校の時か料理をすることは大好きだ。色々なものに挑戦して、「出来る」幅を広げている。

現在は学校での調理実習もあり、ヴィーガンを貫くのは難しい。また栄養学科ではあるものの周りからの理解は少なく「正直とても孤独を感じる」。

それでもヴィーガンを通してたくさんの素晴らしい人たちに出会えた。大学入学後に知り合ったヴィーガンの家族や先輩、SNSで繋がった人たち、それが励みであり、支えだ。「夢、情熱を持った人たちが沢山いる。1人じゃない」。

食で繋がる、人と人

    ヴィーガンになってから大きく変わったと感じるのが精神面だ。「動物を大切にすることから始まり、植物、他人、物、自分、全てを大切にしようって」。人と知り合っても今までは「一度きり」で終わることも多かったが、人の繋がりに感謝し継続的に付き合えるようになった。

しかし、隈本さんの気づきとは逆に社会では繋がりが薄れ、1人でご飯を食べる孤食も増えている。だからこそ今の夢は地域の人と人とを繋げる「地域食堂」だ。

「食卓には『喜怒哀楽』が必要。『喜』や『楽』って文字通り、美味しくて健康的な料理を食べて幸せに元気に生きること。『怒』や『哀』って変かもしれないけど、例えば子供が食卓の周りで走り回る姿を見ておばあちゃんが怒るみたいな(笑)、そんな家族のような温かみのある場所作り。健康的で、地産地消の野菜をたっぷり使った料理をみんなで食べる。それはもちろんヴィーガンで作りたい」。

また「『ヴィーガン=野菜』ではなく、『ヴィーガン=全ての物・人を大切にする』っていうイメージを広めていきたい。ヴィーガンって食べることだけじゃない。考え方そのものだから。それと並行して女優業も頑張ります(笑)」。数えきれない夢が待っている。

★隈本由夏(くまもと・ゆうか)

1999年7月生まれ、三重県出身。趣味は書道、料理、バレエ、旅、音楽、絵と盛りだくさん。料理が好きで、SNSでは作り置きレシピを多く公開。女優を目指しており、大阪や東京にもちょくちょく訪問。女優業でも見ている人たちに「喜怒哀楽」を届けるのが目標だ。

Instagram:@kuma.do

小さい頃の隈本さん(真ん中)。


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Mana Kamiya

理事特定非営利活動法人 日本ヴィーガンコミュニティ
『ひつじの。』編集長。地元新聞社の記者になったのち、オーストラリア・メルボルンに移住。現地の日本語フリーペーパ誌でフリーランスライターをしながら、レストランやカフェのアルバイト、ツアーガイドなどを経験。2018年夏に日本に帰国したのち2018年10月より再び新聞社で働き始める傍ら「多様性のある社会」の実現を目指し、いろいろなことに挑戦中。趣味はクライミング。