「“優しい人がちゃんと優しくなれる社会”を」野村彩月美さん

ひつじの仲間はここにいる

「2歳の雄猫、可愛いでしょ~」。

ウキウキした表情で、白に黒のぶちが印象的な猫が写った写真を携帯で見せてくれた。1年半前、保健センターから引き取った野良猫「ゴン太」。

「名前はまったく猫らしくないんですけど(笑)。念願叶って、社会人になってから飼い始めた初めての猫です。ツンデレな性格が可愛くて……大好きです」と控えめな野村さんが猫の話になると熱く語り出す。

なんといっても、ヴィーガンを知ったのはこの「猫好き」がきっかけだ。「ヴィーガンになって今、めっちゃ幸せ」と語る野村さんにヴィーガンへの思いを聞いた。

(取材・文・写真一部 神谷真奈)

「一緒に住んでいた祖母がちょっかいを出しても『シャーッ』っていう声を聞いたことがないほど優しい性格なんです」。なんとも忍耐強い猫だ。

まず、自分を変える

    「肉を食べない」という選択をしたのは高校2年生の秋のこと。たまたま通り過ぎた大阪・京橋駅で見た募金活動がきっかけで、犬猫の殺処分に興味を持った。インターネットで調べると、年間保健所で処分される犬猫がたくさんいると知り、ウェブサイトの情報を読み続けた。そうするうちに「よく覚えていないけど、気がついたら畜産業の動画に行き当たった」。

その光景があまりにも衝撃的で「『麻酔を使って殺されている』と教えられた学校の授業とあまりに違い、怒り、悲しみの感情で胸がいっぱいに。なんとかしないと」と思った。

犬猫よりも年間に失われる牛、豚、鶏の命の数ははるかに多い。それまでは肉を食べない日はないほど〝肉食〟だったがその時、ふと思った。「世界を変えたいと思うなら、まず自分から変わらなければ」ー。

すぐに母にこう伝えた。「明日から肉食べないから」。

高校の卓球部に所属していた野村さん(左)。ちょうどこの頃にヴィーガンを知った。右は今でも仲のいい親友。実は野村さんがきっかけで今はヴィーガンになった。

高校に持って行く弁当や家で食べる晩御飯はもともと自分で作ることが多かったが、これまでにも増して料理を作る機会が増えた。

ヴィーガンを通して意志を共にする仲間がたくさんできた。

「最初はレパートリーがなかなか増えなくて。そんな困ったときはツイッター。レシピ投稿を参考にした」。そしてそのツイッターで卵・乳製品を摂取しないヴィーガンというライフスタイルにも気付いた。そうして徐々に動物性食品を辞めていき、18歳でヴィーガンになった。

小さな変化、大きな変化

現在は大阪府内の市役所に勤めている。

「職場では『ヴィーガンの子』として有名になってしまって(笑)。最初は恥ずかしいという気持ちもあったけど『ヴィーガン って何?』とか『なんでお肉を食べないの?』 って好意的な関心を寄せてくれる人も多い。それが肉食に疑問を感じるきっかけになればいいなって」。

忘年会、新年会などみんなでご飯を食べに行くときは配慮もあり、去年の忘年会はついにヴィーガン対応してもらえるお店行くことに。「自分の周りが少しずつだけど変わり始めたことが、嬉しい」。   

そして特に親友がヴィーガンに、母が牛、豚、鶏を食べなくなったことは大きな変化だった。「がんこで人の意見はあまり聞かない」という母は娘が肉を食べなくなったのを理解できず、最初は「肉を食べないといけない」と言い続けたからだ。

「私も肉を食べなくなった当初は『肉食なんてありえない!』って思って人に意見を押し付けているところがあったから。ツイッターの投稿もいわゆる〝過激〟なものを投稿することも。その変化が母には攻撃的に見えていたんだと思う。でも、ヴィーガンを実践している様々な人たちと触れて、私もだんだんと考え方が変わった」。肉食を理解してはいないが「肉食がダメだ」と一方的に押し付けることもよくないと考え始めた。

そうすると少しづつ変わっていく娘の姿に、母も興味を持つようになった。「母と深く話をしたことはなかったけど、気が付いたらって感じ。最近では『このヴィーガンレストランに行かない?』って向こうから誘ってくれるようになった」。

「今では母からヴィーガンレストランに誘ってくれるように」。周りが変わってくれることが嬉しいと思うようになった。

ヴィーガンになって優しく、許容性が増したとも感じる。「自分にされて嫌なことは小さな虫にさえしない。もちろん目指している『優しい人』にはまだまだだけど」。

等身大でできることを

正直、今は自分に何ができるかは分からない。

ただ「変化は小さなところから」。ツイッター上での発信や日常の親和的な啓蒙はその1つだと思う。特に日本ヴィーガンコミュニティのメンバーは若く、推進力のある人がそろっているので「将来を担う若い人へ選択を示すためには、同世代の人たちが一番影響を与えやすいと思うから。私のような世代が積極的に情報を発信することが必要だと感じる」。

また、動物愛護の観点だとなかなか浸透しないが、環境保全に焦点をもっと当てれば、今後ヴィーガンも普及するのでないかとも思う。

日本ヴィーガンコミュニティの代表理事・工藤とラジオに出演した時に撮影。

 

2018年のぐりぐりマルシェにて「おにぎらず」を作った時の一枚。

「今はヴィーガンに興味があっても続けられない状況。実践しやすい環境をまずは作ってヴィーガンをし続けられる社会を共創するという日本ヴィーガンコミュニティの理想は私が思う『優しい人が優しくあり続けられる社会』と同じ。それには自分の内面ももっともっと変えていかないと」。照れくさそうに語る野村さんはとても熱い視線でそう語ってくれた。

柔らかい口調の中にも強い芯を持つ姿勢が垣間見えた野村さん。

★野村彩月美(のむら・あづみ)

1998年3月生まれ、東大阪市出身。高校のときは卓球少女。現在の趣味は料理、猫、睡眠。得意な料理は麻婆豆腐。SNSではそんな日常の生活の様子と、ヴィーガンにまつわる情報を発信する。2016年からはエシカルヴィーガンフェスなどでボランティア活動に参加しており「ヴィーガンのためならボランティア活動にも積極的に参加したい」と声を弾ませる。

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Mana Kamiya

理事特定非営利活動法人 日本ヴィーガンコミュニティ
『ひつじの。』編集長。地元新聞社の記者になったのち、オーストラリア・メルボルンに移住。現地の日本語フリーペーパ誌でフリーランスライターをしながら、レストランやカフェのアルバイト、ツアーガイドなどを経験。2018年夏に日本に帰国したのち2018年10月より再び新聞社で働き始める傍ら「多様性のある社会」の実現を目指し、いろいろなことに挑戦中。趣味はクライミング。